つくばエクスプレスは開業時6両、開業12年後に8両、相当年を経過した時点で10両という前提で地上設備が建設されています。しかしながら、1997年の基本計画見直し以前は、開業時8両、将来10両という前提で地上設備が計画されていました。ここでは、1997年以前の設備計画を振り返ります。
現状のTX地上設備の考え方
6両対応、将来8両と簡単に紹介されることがありますが、厳密には嘘なので、工事誌の13ページから引用いたします。
地下構造物は将来の設備増強が困難なことから10両対応の構造物とする。ただし、将来の増強工事が比較的容易と想定される相対式ホームを有する駅(南千住・青井)及び始終端部の駅(秋葉原・つくば)については8両対応の構造物とする。
高架構造物は将来の設備増強が容易なことから6両対応の構造物とする。ただし、島式ホームを有する駅(北千住・八潮・流山新市街地・守谷)については、将来の増強を考慮して10両対応を念頭に置いた構造物とする。
流山新市街地は現在の流山おおたかの森です。南流山駅は開業後に両端を40mずつ延伸して混雑緩和を図りましたが、これは10両対応の構造物を生かした結果です。「相当年を経過した時点で10両」を考慮した部分が多くあることが分かります。
1997年以前の全線配線図
さて、1997年以前の全線配線図はどのような形だったのでしょうか。1991年10月時点の配線図を工事誌から引用します。
開業時の配線図はこちらです。図から、意外と現在の配線図に似ているものの、細部が異なることが分かります。
北千住・流山おおたかの森
北千住にはシーサス(両渡り線)、流山おおたかの森(仮名称:流山新市街地)には待避線と片渡り線がありますが、いずれも1991年時点では無く、開業時は備えない(待避線は準備工事とする)計画だったようです。
守谷
流山おおたかの森の代わりなのか、待避が可能な配線となっており、入出庫線が複線になっています。(現実では、単線だった入出庫線を開業後に複線化することになります。)
万博記念公園
万博記念公園(仮名称:島名)は1996年の基本計画改定で追加された駅です。基本計画策定後に「開発区域の計画に伴い一部変更」(工事誌)が生じ、茨城県とつくば市が「請願駅」として開業させた経緯があります。そのため1991年時点では存在していません。
研究学園
研究学園(仮名称:葛城)には、つくば始発の車両を留置するため電留線が2本計画されていました。これは送電設備の都合でつくば駅に車両を夜間留置できないことが想定されていたからです。
1997年以前の総合基地配線図
1997年以前の総合基地配線図はどのような形だったのでしょうか。現実の配線はこちらです。
1997年以前の総合基地配線図の計画は工事誌には載っておらず、開業前に刊行されていた「常磐新線だより」No.15(1995年)に、設備計画図が掲載されています。
配置両数は8連35本280両となる予定でした。(現実は6連30本180両で開業、2020年10月現在は事故編成を除き6連41本246両です。)
驚きの計画ですね。なんと、現在留置線がある箇所に検車庫、検車庫がある場所に留置線があります。現在の調整池の不自然な駐車場スペースには、総合事務所が建っています。大規模な変更にも関わらず、盛土の範囲は変わっていません。
実は、TX総合基地、「規模や地盤状況等により長期間を要することから、他の工事に先立ち、工事に着手」(常磐新線だより)されており、1995年3月に試験盛土が発注、7月には着工されています。つまり1997年の基本計画見直し時点で、すでに工事が始まっていたことになります。
現状の配線図だと、留置線区域は狭い敷地に収まっている一方、検車庫の前は広々としており、縦列で留置ができるくらいです。1995年時点の設備計画図では、留置線が綺麗に収まっており、幻の10両編成化計画は、総合基地の造成範囲に名残があるかもしれません。
現在の配線だと10両化した際に、留置本数を減らすか、総合事務所を動かす必要がありそうです。「相当年を経過した時点」ではどのような判断となるでしょうか。