E235系投入と玉突き転配

E235系の新製計画と今までの経緯

車両取替中長期計画・ベストプラクティス

山手線のE231系500番台 2002年1月に登場、2005年春までに11両編成52本が投入されたE231系500番台。
2011年以降に外部へ公開された複数の労組資料(例1例2)によると、2008年に「車両取替中長期計画・ベストプラクティス」、2009年12月に「車両取替中長期計画の策定変更版・ベストプラクティス」が内部向けに公表されたことが分かります。 2008年春には「山手線への可動式ホーム柵の導入に取り組みます」との記述が含まれる「グループ経営ビジョン2020-挑む-」が公表されており、山手線、E235系の今後の中長期的な方針が固まったことで、内部向けに(労組との折衝にも影響する)車両計画を公表することができたと考えられます。
2008年当時のベストプラクティスでは、E233系の投入と南武線などへの転出が噂されていた中央総武緩行線が、一転して山手線からのE231系500番台の転入による置き換えへ変更になったようです。具体的には、2014年度からE235系を山手線に投入し、2015年度から機器更新を併設したE231系500番台を中央総武緩行線へ転用、中央総武緩行線から機器更新を併設したE231系0番台、209系500番台を南武線、八高川越線、相模線へ転用する内容となっていたようです(詳細)。

転配属の流れ
2008年時点)

その後、リーマンショックや、E233系の投入線区変更(武蔵野線→南武線)、東急車輌の買収などで、計画自体は大幅に変わったと思われますが、「中央総武緩行線を介した玉突き転配」という柱は、2016年6月の交通新聞記事に至るまで維持されています。また、現実のE235系の投入時期は、2008年時点の計画と概ね合致する結果となりました。

置き換えへ向けたE231系の動き

サハE231形600番台 サハE231形600番台。
台車はTR246系(TR246-P)、ドアは単層ガラスで、E231系類似の仕様です。

サハE231形4600番台 サハE231形4600番台。
台車はTR255系(TR255-A)、ドアは複層ガラスで、E233系類似の仕様です。ドア位置のズレについては、こちらを参照してください。
2010年に公開された公式資料であるJR East Technical Reviewには、先頭車のホーム柵を当初からE235系に対応した構造としたとの記述があるため、可動式ホーム柵設置が計画された時点で山手線へのE235系投入が織り込まれていたことが分かります。
よって、6ドア車置き換えのために新製されたE231系600番台、4600番台(詳細)は、E231系500番台がE235系に置き換えられることを前提に新製された車両となり、E231系500番台の転用先を示唆する仕様となりました。

山手線用E231系500番台(当初)

6D
6D



クハ
E231
サハ
E230
モハ
E231
モハ
E230
サハ
E230
モハ
E231
モハ
E230
サハ
E231
モハ
E231
モハ
E230
クハ
E230
0-500 0-500 0-500 0-500 0-500 0-500 0-500 0-500 0-500 0-500 0-500
山手線用E231系500番台(6ドア車置き換え後)

新製
新製



クハ
E231
サハ
E231
モハ
E231
モハ
E230
サハ
E231
モハ
E231
モハ
E230
サハ
E231
モハ
E231
モハ
E230
クハ
E230
0-500 -4600 0-500 0-500 0-600 0-500 0-500 0-500 0-500 0-500 0-500
E231系の仕様
E233系の仕様(E235系への組み込みを考慮した仕様)

以上のように、置き換えが予定されているにも関わらず、サハE231形600番台はE231系に準じた仕様で新製されました。
山手線から9連以下の線区に直接転用する場合、サハE231形600番台をE233系仕様で新造しておけば廃車を1両減らせたはずですので、そうしなかった以上は、2010年時点で10連の線区への転用が計画されていたことになります。
ベストプラクティスの存在が不明確だった2011年以前は、この奇特な仕様が中央総武緩行線への転用を裏付ける唯一の根拠となっていました。

山手線へのE235系投入計画

E235系量産先行車と量産車 原宿駅宮廷ホーム前で並ぶE235系量産先行車と量産車。E231系500番台の置き換えが進められています。
現在の投入状況は編成表を参考にしてください。

量産先行車プレスリリース

上記のJR East Technical Reviewに続き、2013年8月には労組でもE235系の部品に関する記述がされ、2014年7月に、2015年から新しい系列としてE235系が山手線に投入される旨が公式発表(PDF)されました。
公式発表の通り、2015年3月に量産先行車が落成し、2014年9月に入場したサハE231-4620が新津で改造の上、量産先行編成へ組み込まれました。2016年3月より山手線で本格的に運用されています。

量産車プレスリリース

2016年6月、山手線への量産車の投入が公式発表(PDF)されました。2017年春から2020年春にかけて投入されます。
投入本数は49編成(量産先行車を含めると50編成)で、サハE231形4600番台から改造される10号車を除いた10連の新製を基本とするものの、サハE231形4600番台の改造工期の問題(後述)から、余剰前提でサハE235形4600番台と同等のドア配置を持つ車両が数両新製されます。
2016年6月の交通新聞によると、この余剰前提の代車は2両となります。

改造工期の問題によるサハE235形500番台の登場

サハE231形4600番台をE235系に組み込むには改造が必要です。ドア位置が特殊であり、可動式ホーム柵も設置されている山手線では、E231系からE235系に置き換えを進める過程でも、10号車はサハE231形4600番台またはサハE235形4600番台を使い続けなくてはなりません。(10号車の可動式ホーム柵がE233系先頭車にも対応しているのは京浜東北線との共用を考慮した区間のみで、それ以外の区間では先頭車による代替もできません。)
仮にE235系に全てのサハE231形4600番台を組み込む場合、「E231系1編成を離脱させ、10号車を抜き出して改造し、改造が終わった10号車を新製したE235系10両に組み込む」という動きを繰り返す必要があり、2か月はかかるであろう改造工期の間、山手線では1編成が使用できなくなります。

実際にはサハE231形4600番台は元々52両(すでに1両は改造済み)あって、山手線は48運用(2016年3月以降)しかないので、2両くらい同時に改造をすることができますが、それでも改造工期が2か月だとすると、1か月に1編成しかE235系を投入できず、2017年春の投入開始では東京オリンピック(2020年夏予定)に間に合いません。
そこで、余剰前提でサハE231形4600番台と同等のドア配置を持つ車両を新製することで、改造工期の確保と量産ペースの引き上げを図ることになりました。

改造工期確保のため
余剰前提の代車を新製

この工夫により、投入は下記の順序となり、最終的に10号車4両(E231系500番台とE235系の編成数の差による余剰車が2両、改造工期確保用の代車で2両)が余剰になりました。余剰車は2020年12月に東京総合車両センターで解体されました。
編成新製両数10号車の捻出元運用開始に伴い離脱する10号車の転出先
トウ01 10 トウ520(運用削減による余剰) トウ03
トウ02 10 トウ540(運用削減による余剰) トウ06
トウ03 10 トウ01運用開始に伴う離脱編成 トウ07
トウ04 11 余剰前提で新製 トウ08
トウ05 11 余剰前提で新製 トウ09
トウ06 10 トウ02運用開始に伴う離脱編成 トウ10
トウ07 10 トウ03運用開始に伴う離脱編成 トウ11
トウ08~45 (省略)
トウ46 10 トウ42運用開始に伴う離脱編成 トウ50
トウ47 10 トウ43運用開始に伴う離脱編成 (余剰)
トウ48 10 トウ44運用開始に伴う離脱編成 (余剰)
トウ49 10 トウ45運用開始に伴う離脱編成 (余剰)
トウ50 10 トウ46運用開始に伴う離脱編成 (余剰)
以上の経緯により、サハE231形4600番台に余剰が発生することを前提に、サハE235形500番台が新製されました。

E231系0番台・209系500番台の転用

2014年7月の労組資料で「中央総武緩行線を介した玉突き転配」という柱の維持が確認されていましたが、2016年6月の量産車公式プレスリリースでは、「山手線で使用している車両E231系500代については、中央・総武緩行線への転用改造等を実施し、継続して使用する計画」と明記され、転用が公式発表されました。
2014年度時点で置き換え対象と考えられる205系が所属していた線区は以下の通りです。
線区2014年度編成数ベストプラクティスコメント
相模線4連13本209系500番台の転用
八高川越線4連11本209系500番台の転用所属のうち6本は未更新の209系。
武蔵野線8連43本E233系の新製所属のうち3本は未更新の209系。205系の大半は新系列。
仙石線4連18本205系の新系列化機器更新の動きが無い。
宇都宮・日光線4連12本不明機器更新していないものの転用直後。
鶴見・南武支線2連3本・3連9本205系の新系列化機器更新の動きが無い。先頭化改造が必要。
南武線6連36本E231系0番台の転用E233系により統一予定。
2008年時点の計画(ベストプラクティス)と比べて、205系の新系列化が見送られていることが分かります。209系についても同様ですので、新製数を増やすことを前提に機器更新を見送っていると考えられます。
その後、労組資料から、上野東京ライン開業に伴う運用増のため、2014年度にE231系0番台を常磐快速線へ転用することが明らかとなり、具体的な転用先が固まってきました。 また、2016年6月の交通新聞では、「中央総武緩行線のE231系0番代と209系500番代については、武蔵野線と川越線、八高線に転用して、既存車両を置き換える予定」とされ、転用の全貌が明らかとなりました。

転配属の流れ
(最終)
常磐快速線のE231系0番台

常磐快速線

上野東京ライン開業に伴う運用増のため、2014年度に三鷹車両センターの10連3本から、松戸車両センターの10連2本を組成し、7両が保留車(武蔵野線へ転用)、3両が廃車となりました。
2017年10月改正で常磐快速線は運用数が減少し、2018年3月改正で運用数が増えていた武蔵野線へ1編成が再転用されました。

武蔵野線

205系42編成が所属していましたが、2018年3月の増発により運用数が1本増えていました。 209系500番台8連8本(既存編成と合わせて11本)、E231系0番台8連34本(うち1本は常磐快速線からの再転用)が転用され、不足する1編成は予備編成の削減(3本→2本)で補う形となりました。

八高川越線

E231系0番台6編成に加え、209系500番台5編成が転用されました。所属編成のうち6本は未更新の209系3000・3100番台でしたが、209系3100番台はワンマン化改造の予備編成として、置換えられずに残存しました。

中央総武緩行線

転用ではありませんが、E231系500番台52本が転入した後でも、中央総武緩行線の56運用を回すためには編成数が不足するため、交通新聞では一部のE231系0番台が残るとされており、2018年2月には、実際に6M4T化が行われていることが明らかとなりました。
上記の八高川越線向けから抜かれたMユニットを活用しての6M4T化が行われており6編成が出揃いました。

まとめ

  • 2008年03月 - グループ経営ビジョン2020-挑む-が公表され「山手線への可動式ホーム柵の導入に取り組みます」との記述。
  • 2008年ごろ - 車両取替中長期計画・ベストプラクティスが内部向けに公表され、E235系による玉突き転属に言及。
  • 2010年02月 - 新造4ドア車(サハE231形600番台、4600番台)が登場し、6ドア車(サハE230形500番台)の淘汰が開始。
  • 2010年06月 - TASCの使用が始まり、恵比寿駅で可動柵使用開始。
  • 2010年10月 - 公式資料であるJR East Technical Reviewにて、山手線へのE235系導入が示唆。
  • 2011年08月 - 6ドア車が運行終了(31日)。
  • 2014年08月 - E235系量産先行車の投入が公式発表(PDF)
  • 2015年03月 - E235系量産先行車が登場。
  • 2016年06月 - E235系量産車の投入が公式発表(PDF)
  • 2016年06月 - 交通新聞で、三鷹車両センター所属車の武蔵野線、八高川越線への転用が報じられる。
  • 2017年04月 - E235系量産車が登場。
  • 2020年春 - E235系量産車の投入が終了。E231系500番台が撤退。
  • 2020年12月 - E231系余剰車が全て解体。
戻る HOMEへ
タイトルとURLをコピーしました